現象から理解する:何が起こり、なぜ起こる?
行列の対角化は、適切な基底で見たときの線形変換を『各軸を何倍するか』に分解することです。相異なる固有値をもつ2×2行列なら、独立な固有ベクトルを並べて対角化できます。
行列を何度も掛ける処理では、一般の座標系では成分が混ざり続けます。しかし固有ベクトルを座標軸にすれば、各方向は独立に伸び縮みするため対角行列で扱えます。
対角化とは固有ベクトル基底へ座標を変え、その基底で計算してから元へ戻す操作です。行列のべき乗や線形微分方程式を簡単にする意味があります。
現象を表す公式・定義
この公式を使えるのはどんなとき?
n×n行列Aでn本の一次独立な固有ベクトルが得られる場合。
何を代入し、どう使う?
Pの列に固有ベクトル、Dの対角に対応する固有値を同じ順に置きます。AP=PDを確認してから計算します。
使えない条件・検算のポイント
固有ベクトルが不足する場合は対角化できません。n=1ならAに戻り、n=0ならIになるか検算します。
現象を図で理解する
模式図は法則を理解するための補助です。実際に代入する数値や条件は、公式と問題文で確認してください。
式が成り立つ理由・導出の流れ
適用条件:行列A=[[2,1],[1,2]]。固有値3,1、それぞれの固有ベクトルv₁=(1,1)ᵀ、v₂=(1,−1)ᵀ。
冒頭の基本式は、現象の向き・保存則・変化率から導かれます。下の例題ではどの項を残し、何を既知量とするかを順に確認します。
代表的な計算式
よくあるミス・検算の観点
- 固有ベクトルをPに並べた順と、固有値をDに並べる順を合わせる。
- Pが正則でなければP⁻¹は使えず対角化できない。固有値の重複だけで判断しない。
- P⁻¹AP=DとA=PDP⁻¹を取り違えない。
単位、符号、初期条件、ベクトルの向きを最後に確認しましょう。
例題1(基本)|何を求めるかから始める
- Aの固有値は3と1、対応する固有ベクトルはv₁=(1,1)、v₂=(1,−1)。
- 固有ベクトルを列に並べP=[[1,1],[1,−1]]、固有値を対角に並べD=diag(3,1)とする。
- Av₁=3v₁、Av₂=1v₂よりAP=PD。
- detP=−2≠0なのでPは逆行列をもち、A=PDP⁻¹。
- Aⁿ=PDⁿP⁻¹= P diag(3ⁿ,1) P⁻¹ と表せる。n=1ではAに戻ることを確認。
例題2(標準)|P=[[1,1],[1,−1]]、D=diag(3,1)。PDP⁻¹を計算せよ。
- P⁻¹=P/2。
- PDP⁻¹=[[2,1],[1,2]]。
演習問題(基本・標準・発展)
基本から段階的に考えるオリジナル問題です。内容確認中の単元には共通の復習問題も残しています。
対角行列diag(4,2)を対角化するときP=Iを取れるか。
手順と解説を見る
- 元の行列が既に対角行列。
- P=I、D=diag(4,2)とできる。
A=[[2,1],[1,2]]の固有値を求めよ。
手順と解説を見る
- det(A−λI)=(2−λ)²−1=0。
- λ=1,3。
P=[[1,1],[1,−1]]の逆行列を求めよ。
手順と解説を見る
- P²=2I。
- したがってP⁻¹=P/2。
P=[[1,1],[1,−1]]、D=diag(3,1)。PDP⁻¹を計算せよ。
手順と解説を見る
- P⁻¹=P/2。
- PDP⁻¹=[[2,1],[1,2]]。
A=[[2,1],[1,2]]のAⁿをPとDで表せ。
手順と解説を見る
- A=PDP⁻¹。
- Aⁿ=P diag(3ⁿ,1)P⁻¹。
A=[[2,1],[1,2]]のA²を直接計算し固有値との関係を述べよ。
手順と解説を見る
- A²=[[5,4],[4,5]]。
- 固有値は3²=9と1²=1。
B=[[1,1],[0,1]]が対角化できない理由を述べよ。
手順と解説を見る
- 固有値は1が重複する。
- (B−I)v=0より第2成分が0。独立な固有ベクトルが1本しかないので不可。
問題に添えた図は考えるための模式図です。数値や関係を判断するときは必ず問題文の条件を優先してください。
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未完了関連単元・参考資料
前後の単元を続けて読むと、定義から応用までのつながりを確認できます。院試の過去問は大学の公式公開先を参照し、当サイトには独自解説・オリジナル練習問題を掲載します。